7 : 13 シリア文字メモ

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シリア文字: Unicode規格書の問題、Firefoxの問題

2013年 2月14日
記事ID e30214

Unicode 規格書には、シリア文字に関して複数の問題がある。シリア文字サポートにおいて Firefox は IE より劣る。

目次

シリア語とシリア文字

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「シリア」というと、中東・アラブというイメージもあるが、シリア語・シリア文字は、国としてのシリア(シリア・アラブ共和国)とは関係ない。

シリアック Syriac
1. 言語・文字。シリア語は、広い意味ではアラビア語やヘブライ語と同じセム語だが、これらとは別の区分(アラム語)に属する。シリア文字は、アラビア文字・ヘブライ文字と似ているが、異なる文字システム。
2. 転じて、この言語の話者(民族)。現在のトルコ・シリア・イラク・イランなどに当たる地域を故郷とし、アッシリア人・カルデア人とも呼ばれる。大部分はキリスト教徒。
シリア人 Syrian
文脈によってシリアックを指すこともあるが、一般的にはシリア国民(民族ではなく国籍)を指す。大半はイスラム教徒で、アラビア語を話す。この多数派の人々は、シリア文字や現代シリア語とは直接関係ない。
現代アラム語

アラム語話者は、中東がイスラム化される前からメソポタミアとその周辺地域に住んでいた。アラム語は、大きく東アラム語と西アラム語に区分される。

現代アラム語話者は、この人々のうち、現在でもプレ・アラブの文化と言語を保っている諸民族。次のように4グループに分類できる。いずれも少数民族となっている。

* 主にアッシリア現代アラム語・カルデア現代アラム語・トゥロヨ語(スライト語)。 話者数は、Ethnologue 第16版(2009)では、それぞれ21.9・21.6・8.4(計51.9万)だったが、Ethnologue 第17版(2013)では、23.2・20.6・6.2(計50.0万)となった。いずれも1994年のデータを基にした推計。 このほか、ヘルテビン語 Hértevin [hrt]、ボハタン(ボタン)現代アラム語 Bohtan Neo-Aramaic [bhn]、 コイ・サンジャク・シリア語 Koy Sanjaq Surat [kqd]、セナヤ語 Senaya [syn] があるが、いずれも話者は1000人程度。

シリア語

シリア語話者は、トルコ・シリア・イラク・イラン地域に住み、 迫害を受けながらも、独自の言語・文化・宗教(キリスト教)を保ってきた。

この人々の教会では、今でも儀式などで古典シリア語が使われる。古典シリア語は、東シリア語と西シリア語(東方言と西方言)に分けられ、東と西では発音の仕方や文字の書き方(字体や母音記号)が異なる。アッシリア東方教会、古代東方教会、カルデア教会は東シリア語を使い、シリア正教会、シリア・カトリック教会は西シリア語を使う。東シリア語・西シリア語(東方言・西方言)はいずれも東アラム語に含まれるサブグループで、西シリア語(西方言)の「西」は西アラム語という意味ではない。

現代シリア語は、この人々が日常使う同系の現代語。次の3種類を含む。

使用地域は単純化した説明であり、実際には、国境によって方言が区分されるわけではない。不穏な情勢のため、話者の多くは国外に脱出している。

地図(PNG, 3 KiB): トルコの南にシリア・イラク・イランが、トルコの北東にジョージア・アルメニア・アゼルバイジャンがある。

注: アルメニアとイランに挟まれた小部分は、アゼルバイジャン領ナヒチェバン自治共和国。

シリア文字

古典シリア語・現代シリア語は、一般にシリア文字で書かれる。ただし、トゥロヨ(スライト)語はラテン文字で書かれることも多い。 シリア文字は、ヘブライ文字やアラビア文字と同系で、右から左に進む。

シリア文字は、おおまかに古体(​ʾEsṭrangēlā)、東シリア体(Maḏnḥāyā)、西シリア体(Serṭā / 西シリア風に書くと Serṭō)の三つの字体に分けられる。字体によって外見や用法がかなり変化する。以下、3種類の字体による同じ例文を画像で示す(テキストはフォント環境によって表示が変わる)。

例文: Takumī lā rāḥem Natsukī. 「タクミはナツキを好きではありません。」

ʾEsṭrangēlā
ܬܐܟܘܡܝ ܠܐ ܪܚܡ ܢܐܬܣܘܟܝ ܀
 ‎[PNG画像]‎
Maḏnḥāyā
ܬܲܐܟܘܼܡܝܼ ܠܵܐ ܪܵܚܹܡ ܢܲܐܬܣܘܼܟܝܼ ܀
 ‎[PNG画像]‎
Serṭā
ܬܰܐܟܽܘܡܺܝ ܠܳܐ ܪܳܚܶܡ ܢܰܐܬܣܽܘܟܺܝ ܀
 ‎[PNG画像]‎

Windows XP のデフォルトでは、シリア文字のフォントは Estrangelo Edessa しかない。これは名前の通り、古体のフォント(​ʾEsṭrangēlō は ​ʾEsṭrangēlā の西シリア風の発音)。従って、デフォルトでは、東シリア体・西シリア体の文字を表示できない。

Unicode 規格書の問題

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Unicode 6.2.0 の規格書の第8章([PDF] Middle Eastern Scripts)の 8.3 Syriac において、シリア文字が扱われている。

paṭrīyarkā の表記

Figure 8-7(268ページ)の4つ目の例として、「総主教」(最高位の聖職者)という意味のシリア語 ܦܛܪܝܪܟܐpaṭrīyarkā が西シリア体で与えられているが、表記に問題がある。

規格書を画像で引用する:

PNG画像(8 KiB): ܦܛܪܝܪܟܐ
のはずが
ܦܛܪܝܪܟ‍ ܐ
のように記されている

Kāp̄ ܟ‍‏ は、後続する ʾĀlap̄‍ܐ とつなげて書く必要がある(ܟܐ)。さらに、文字自体を混同して、Kāp̄ の代わりに Bēṯ ܒ を使っている。

Thesaurus Syriacus 3097ページ左上で、表記を確認できる:

JPG画像(2 KiB): 
「ܦܰܛܪܺܝܰܪܟܳܐ」

参考として、上の辞書と同じように母音記号を付けてテキスト表記すると ܦܰܛܪܺܝܰܪܟܳܐ となる(利用できるフォントやブラウザなどの条件によって、表示は異なる。母音記号の有無は本質と関係ない )。

アッシリア語話者の所属教会

規格書266ページには、East Syriac is used by the Assyrians (that is, Ancient Church of the East) and Chaldaeans. [東シリア語は、アッシリア人(つまり古代東方教会)とカルデア人によって使われる] とある。実際には、アッシリア人の主要な教会はアッシリア東方教会で、古代東方教会はそこから分離してできた比較的小さな宗派だ。(分離の主因は、グレゴリオ暦を採用するかしないか…。両教会の関係は、現在では改善している。)

どちらか一方を書くなら、Ancient Church of the East ではなく Assyrian Church of the East を挙げるべきだろう。

規格書を画像で引用する:

PNG画像(10 KiB)

現代アラム語を表記する文字

規格書266ページには、The Syriac script is widely used for modern Aramaic languages, next to Hebrew, Cyrillic, and Latin. ともある。「現代アラム語はヘブライ文字で記されることが多く、次にキリル文字、次にラテン文字、次にシリア文字」と読めるが、あまり良い説明ではない。

実際、現代アラム語にはヘブライ文字で記される言語がいくつかあるが(Judeo-Aramaic language)、話者は合計でも2万5千人程度にすぎない。

アッシリア語は、歴史的には一部でキリル文字で書かれたこともあるが、それが一般化したことはない。

トゥロヨ(スライト)語は、例えばスウェーデンでは明らかにラテン文字で記されているが、話者は10万人以下だ。

アッシリア語・カルデア語の話者数は合計40万人以上で、これらは19世紀以降、シリア文字で書かれ、いろいろな書物も出版された。ネット上では、現代シリア語をラテン文字でタイプしている人は珍しくないが、ラテン文字の普及度がシリア文字の普及度を超えているとまでは言えない。

一方、for modern Aramaic languages と言うからには、マンダ語(話者5500人)のマンダ文字も考慮しなければならないだろう。

まとめると、「現代アラム語は、シリア文字で書かれることが多く、一部ではラテン文字も使われる。そのほか、ヘブライ文字、マンダ文字も使われる」 となる。

səyāmē 関連

セヤメまたはスヤメ(ラテン文字では通常 seyame または syame と表記 †)は、ウムラウトに似た記号で、その記号が付いた単語が複数形であることを表す(一般的には、間接的に発音の区別を表すとも言える。ただし、seyame があってもなくても発音が変わらないケースもある)。

† 西シリア文字では ܣ̈ܝܳܡܶܐ。 東シリア文字では ܣܝܵܡܹ̈ܐ‎ (s(ə)yāmē)。 テオドーア・ノルデケ(Theodor Nöldeke)の『簡潔シリア語文法』 (de: Kurzgefasste syrische Grammatik / en: Compendious Syriac Grammar), §16A (de / en) では、Se̊jâmê / Se̊yāmē と記されている。

規格書269ページには、In Modern Syriac usage, when a word contains a rish and a seyame, the dot of the rish and the seyame are replaced by a rish with two dots above it. とあるが、「seyame とは何か」がどこにも書いていない。 Table 8-12 の U+0308 の項 This is the plural marker の後ろに known as seyame とでも書いておくと親切だ。

規格書を画像で引用する:

PNG画像(9 KiB)

PNG画像(8 KiB)

規格書の説明に反して、Rēš + seyame のリガチュール ܪ̈ は、現代シリア語だけでなく古典シリア語にも適用される。ただし、seyame をどの文字に付けるかについて絶対的な規則はない(必ずしも Rēš ܪ に付くとは限らない)。 Nöldeke, §16D (de / en) にはこうある:

PNG画像(8 KiB)

With the point of the letter ܪ the plural sign generally blends into ܪ̈, e. g. ܡܳܪ̈ܰܘܳܬܴܐ “lords”; ܫܱܪܻܝܪ̈ܶܐ “true”; still there are found also ܝܱ̈ܩܺܝܪܱܝ “revered”, ܥܷ̈ܣܪܻܝܢ “twenty”, ܩܾ̈ܘܪܝܴܐ “villages”, and many others.

その他

Firefox のシリア文字サポートの制限

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2013年2月現在、Firefox のシリア文字サポートには、

  1. 制御文字 SAM を扱えない
  2. Serṭā における ܠ ܐ のリガチュールを表示できない

という2種類の制限がある。どちらも IE では、おおむね正しく表示される。これらは比較的まれなケースであり、シリア文字サポート全体が破綻するような深刻な問題ではない。

シリア語省略記号(SAM)

SAMU+070F SYRIAC ABBREVIATION MARK)は、原則として ʾEsṭrangēlāSerṭā(古体と西シリア体)で用いられ、Maḏnḥāyā(東シリア体)では用いられない。規格書の267ページ以下、参照。

これは、省略されている語(略語)や、数字として使われている文字の上に水平線を引くもの。その水平線の始点・終点・中点の上に小さな丸を描画するのが望ましいが、必須ではない。水平線は、基本的には省略語全体の上に引く。ただし、高い文字が含まれるときは、そこには付けず、最後の高い文字の直後から始める。

Nöldeke, Appendix から、画像で抜粋:

PNG画像(5 KiB): 「The letters [...] may take numerical values.
A line drawn above them, or some other distinguishing mark,
 is wont upon occasion to make them significant as ciphers.
Examples:
‏܏ܟܓ‎ = 23;
‏܏ܪܛ‎ = 209;
‏܏ܫܨܕ‎ = 394」

注: ドイツ語版・初版では「394」が「391」と誤植されている。第2版では修正されている。

Wikipedia にも Syriac Abbreviation Mark の項がある。

SAM (​ʾEsṭrangēlā) on Windows XP
例1 例2
Correct 画像: SAMの例1 画像: SAMの例2
IE8 画像: 例1 by IE (Good) 画像: 例2 by IE (Good)
Firefox3.6 画像: 例1 by Firefox (Bad) 画像: 例2 by Firefox (Bad)
You ܏ܝܗ ܒ܏ܝܗ

上の表では、正しいレンダリング例と、Firefox のレンダリング例を画像で対比させている。Firefox については 3.6 と書いてあるが、Version 17 ESR と Version 18 でもテストしている(以下同じ)。Windows のデフォルトのシリア文字フォント Estrangelo Edessa, Version 5.00 を使用。このフォントは、Meltho Fonts として一般配布されている。

左側の例では、Yōḏ ܝ と Hē ܗ がこの順番で並んでいる。 Yōḏ は数字の 10 を表すことがあり、Hē は数字の 5 を表すことがある。ここでも、Yōḏ + Hē は普通の文字としてではなく、15(ḥamšaʿsar)を表す略語として用いられている。そのため、上に線が引かれている。

右側の例は、上記の直前に前置詞の b- を付けたもの。この前置詞は略語の一部ではない。

実際の規格書では、次のように、例が西シリア体で表示されている。表のテキスト部分は、インストールされているフォントなどの条件によっては、意図通りに表示されない(この例では、Meltho FontsSerto Kharput, Version 1.20 を使っている)。

SAM (Serṭā) on Windows XP
例3 例4
Correct 画像: SAMの例3 画像: SAMの例4
IE8 画像: 例3 by IE (Good) 画像: 例4 by IE (Good)
Firefox3.6 画像: 例3 by Firefox (Bad) 画像: 例4 by Firefox (Bad)
You ܏ܝܗ ܒ܏ܝܗ
Lāmaḏ + スペース + ʾĀlap̄」のリガチュール

「間にスペースを含むリガチュール」というのは直観に反し、HTML の原理上、扱いにくい面がある。このリガチュールは義務的ではなく、技術的には、リガチュールを使わなくても(Firefox のレンダリングでも)間違いではない。

Optional Ligature
Ligated 画像: Lāmadh + SPACE + ʾĀlaph のリガチュール
IE8 画像: IEはこれをサポート
Firefox3.6 画像: Firefoxは非対応
You ܠ ܐ

フォントは Serto KharputSerto Jerusalem も、このリガチュールをサポートしている。

Nöldeke, §1C (de / en) 以下を、画像で抜粋:

PNG画像(5 KiB):
For ܠ‌ ܐ one sometimes puts [a ligature] ܠ ܐ,
and thus draws in this case two words together.
[...] the fusion together of two words, of which the one ends in ܠ,
while the other begins with ܐ [...]

2013年10月29日追記: ܠ ܐ のリガチュールの制約は、Firefox 17 ESR には存在するが 24 ESR では解決された。

シリア文字: Unicode規格書の問題… > 更新履歴

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  1. 2013年2月14日: 初版。
  2. 2013年2月27日: seyame 関連の項で、説明を詳しくした。
  3. 2013年3月15日: paṭrīyarkā の表記の項で、 画像の品質を改善。
  4. 2013年10月29日: (1) シリア文字の語末の ʾĀlap̄ のローマ字転写をやめた。 (2) Firefox で「Lāmaḏ + スペース + ʾĀlap̄ のリガチュール」を表示できるようになったことを追記。 (3) 説明がくどい部分を削除し、若干の補足的説明を追加した(現代のシリアの国名など)。 (4) 一部の用語で表記の細部を変更した。
  5. 2013年11月29日: (1) 現代シリア語の話者数を52万から50万に変更。これは、Ethnologue の第16版(2009)→第17版(2013)での更新に対応する。 (2) 一部の用語で表記の細部を変更。「ボハタン」→「ボータン」など。 (3) ピクセルサイズが大きい画像は、埋め込まず別ファイルへのリンクにした。
  6. 2013年12月1日: 一部、話者数データが Ethnologue 16版のままだった部分があるので、追加修正。
  7. 2013年12月22日: 表記の統一: 西シリア関連でも、原則として ā を “ō” と書かないようにした。その他、細部の微調整。
  8. 2014年1月3日: 地図のアゼルバイジャンの海岸線を一部修正。
  9. 2014年1月5日: シリア文字の例文(画像)を新しくした。
  10. 2014年1月12日: 微調整。
  11. 2014年1月19日: IE6/7に一応対応。2013/ptryrk.png をオリジナルに近い 2014/ptryrk.jpg で置き換えた。
  12. 2014年4月27日: IE5.5での表示を改善。その他、微調整。
  13. 2014年8月31日: 「ボータン」→「ボハタン(ボタン)」。
  14. 2016年2月22日: 地図中の「グルジア」→「ジョージア」。

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シリア語: カラバシ注解

2013年12月 1日
記事ID e31201

『読み方のレッスン』 Hergē d-Qeryānā は、子ども向けに作られたシリア語の読本シリーズ。著者はアブドムシーホ・ナウマン・ド・カラハバシュ(カラバシ)。初歩的なものからだんだん複雑なものへと文章が配列してあり、課ごとに練習問題が付いている。教師の指導の下で使われることを想定した形式だが、独習用のテキストとして使うことも可能だ。この記事では、その魅力を紹介し、第1巻全21課に独学者のための注釈を付けた。

西方言より東方言の方が発音が古典シリア語に近いので、古典期のシリア語を学ぶには東方言を基本にした方が有利かもしれない。しかし、シリア語の代表的な辞書・文法書などでは西シリア文字が使われているので、実用上、西の文字に慣れることは不可欠だ。西シリア文字で書かれたカラバシの教科書を使い、それを(西方言の発音ではなく)古典シリア語に近い発音で読めば、西シリア文字の読み書きの練習と同時に古典シリア語の勉強を進められて、一石二鳥となる。

目次

『読み方のレッスン』第1巻の魅力と特徴

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この教科書は、アッシリア人(シリア人)の子どもたちのために20世紀に作られたもの。演習の問題文がシリア語と英語の両方で書いてあったり、巻末の語彙集では使われている全単語の英訳が載っていたりして、結果的に語学教材としても使えるようになっている。

本書は、子どもの興味を引くような無邪気なユーモアに満ちている。繰り返し登場するイチジクの話、ラクダの話、春夏秋にほとんど降水がないカミシリを背景にした話など、言葉のふしぶしに生活感があり、生きた言語を学んでいることを実感できる。普通、シリア語の例文というと聖書の引用などやたらと重々しいものが多いが、その点、「ヤギのミルクはおいしいです」といったカラバシの日常的な文章は、軽やかで新鮮だ。

脈絡のない「文法の例文」ではなく、課ごとに小さな物語になっているのがいい。しかも、絶対状態と強調状態、男性形と女性形、基本態とパエル態などが、さりげなく対比され、実例を通じて文法のエッセンスに触れられるようになっている。

一般的なシリア語の教科書は、体系的に文法事項を説明する。最短距離で一通りのことが学べる。これは効率的だが、半面、多くの変化表を機械的に記憶する必要があり、無味乾燥で浅薄になりやすい。カラバシの場合、説明なしに、ただ生き生きとした実例がある。「実例を通じて体得する」というアプローチは万人向けの方法ではないが、相性が合えば大きな収穫が得られるだろう。

著者について
ܥܰܒܕܡܫܝܚܐ ܢܰܥܡܰܢ ܕܩܰܪܰܗܒܰܫ
発音ʿAḇd-Mšīḥā Naʿman d-Qarahbaš/ʕavd.m(ə)ʃiː.ħɔ(ː) naʕ.man d(ə)qa.rah.baʃ/ または​ ʿAḇeḏ-/ʕaveð-/
解説アブドムシーホ(アベドメシーホ)という名前は、語源的には「メシアのしもべ」という意味。ナウマンが名字らしい。ド・カラハバシュは「カラハバシュ村の」。「カラハバシュ村のアブドムシーホ・ナウマン」となる。
補足[2014-04-27追記] 西シリア風に表記すれば、名前の最初の部分は​ ʿAḇd-Mšīḥō または​ ʿAḇeḏ-Mšīḥō となる。カタカナ表記は西シリア風になっている。

ディヤルバクルDiyarbakır)はトルコ南東部の大都市だが、19世紀初め、トルコがオスマン帝国だった時代、この都市はディヤルベキル(Diyarbekir)と呼ばれていた。その北東に、アッシリア人の集落、カラハバシュ村があった。1903年、彼はこの村で生まれ、シリア正教会の修道院で神学とシリア語を学んだ。第二次大戦中、トルコではアルメニア人・アッシリア人に対する迫害が起きた。1915年、村は破壊され、多くの住民が殺害された。当時少年だったアブドムシーホは生き延び、勉学を続けた。

1920年代に彼はトルコを去り、シリアのアレッポ(当時は仏領)に移住した。そこからさらにベイルート(仏領)、そしてエルサレム(英領)に移転。教師・文筆家として活動した。1951年、招請を受けてシリア(独立国となっていた)に戻り、北東部のカミシリالقامشليal-Qāmišlī)に住んだ。アッシリア人のための学校でシリア語を指導するためだった。彼が『読み方のレッスン』シリーズを執筆したのはこの時期。晩年は再びレバノン(独立国)に住み、80歳まで生きて、1983年にベイルートで亡くなった。

「カラハバシュ」は本来は村の名前だが、一般的に彼はこの名で呼ばれる。この記事では簡略化して「カラバシ」と表記する。便宜上、カラバシの『読み方のレッスン』のことも単に「カラバシ」と呼ぶ。

参考資料: Wikipedia – Die freie Enzyklopädie: Naaman Abdalmesih KarabashAssyriska Distriktet i Göteborg: Abd Mshiho KarabashiÜngör (2009): Young Turk social engineering : mass violence and the nation state in eastern Turkey, 1913-1950

この注解の内容

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カラバシ第1巻(下記『米国版』でいう Lessons Twoを使って独学でシリア語を勉強する人の参考になるように、以下のような語句について箇条書き形式で簡単な注釈を付けた。

この他、注意すべき文法事項、文化的背景、Unicode との関係での注意点などについてもコメントした。必要以上に詳細な説明は避け、分かりやすく実用的であることを目指した。

新装版について(2014年4月27日)

フォーマットを「箇条書き」から「定義リスト + テーブル」に変更し、情報の構造が一目で分かるようにした。古いブラウザ(IE5.5/6/7)にも対応した。

導入

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The American Foundation for Syriac Studies が公開している Lessons TwoJavaScript 必要版 / 不要版)がオリジナルの第1巻に当たる(以下、米国版と略)。同サイトでは、現在(2013年11月)、オリジナルの1・2・4・5巻が公開されている。JavaScript 不要版の方が文字が大きくて見やすいかもしれない。

Lessons OneJavaScript 必要版 / 不要版)は、第1巻のさらに前の準備段階(文字の説明など)。ざっと目を通しておくとよい。ただし、そこで説明されている発音は西方言で、古典シリア語とは若干異なる。

これとは別に、オリジナルの1・2・3巻は Syriac Orthodox Church in Canada からPDFファイルとしてまとめてダウンロードできる(カナダ版)。

米国版の方が印刷が鮮明だが、一つのファイルとしてダウンロードできない。カナダ版は一つのファイルだが、微妙な表記の不統一が比較的多い。どちらでもテキストはほとんど同じなので、気に入った方を使えばいい。カナダ版・第1巻には巻末の単語集がないので、このバージョンを使う場合、単語集については米国版を併用する必要がある。

ウェブ上で利用できる辞書・参考書については、記事末尾の付録1を参照。CAL(辞書)、Jess.(辞書)、Nöld.(文法書)については、そちらで説明してある。使い方によっては、CAL で検索する方が、ページをめくって巻末の単語集を調べるより早くて便利なことがある。

フォント

一般に、フォントがないと、西シリア文字・東シリア文字は全く表示できない。Meltho Fonts の書庫 melthofonts-1.21.zip (書庫名は2013年11月現在)をダウンロードして、西シリア文字のフォントと東シリア文字のフォントを最低1個ずつ用意する必要がある。書庫のフォントを全部インストールしてもいいが、この記事の表示では、とりあえず次の3ファイルが必要になる。

同梱のインストーラー(melthofonts-1.21.msi)はうまく働かないようだ。

この記事では、CSSを使ってシリア文字フォントを選択している。この文字→ ܠܐ がこの画像 → (ギリシャ文字の μ に似た形) のように表示されれば、正しくフォントが選択されている。

Firefox ではシリア語の表示が微妙に乱れることがある。PageUpPageDown で1画面分スクロールして元に戻すと直ることがある。

キーボード配列

キーボードからシリア文字をタイプするのは意外と簡単だ。そして、それができると Unicode の利点を活用できる。つまり、テキストに検索がかけられる。自分がタイプした文章を検索して、ある単語が既出かといったことを簡単に調べられる。ウェブの辞書などとの間で直接コピペが成り立つ。画像のテキストとは天地の差だ。

シリア語のキーボードレイアウトには、「Syriac」と「Syriac Phonetic」の2種類があり、Windows ではどちらも OS に付属している。Phonetic でない無印「Syriac」はアラビア語キーボードと似た配置にしたもので、アラビア語またはペルシャ語配列に慣れている人向け(付録5、参照)。一般向けは「Syriac Phonetic」配列の方で、これは、AܐBܒGܓ というふうに、文字の発音に基づいて直観的に入力できるようにしたもの。この方法なら(普通のローマ字入力ができる人なら)すぐシリア文字をタイプできる。以下の5種類の母音記号、5種類の文字、6種類の句読点・記号だけは入力法を覚える必要がある。

母音記号(キーボード左上の5個のキー)
Shift+Q Shift+W Shift+E Shift+R Shift+T
◌ܰ ◌ܳ ◌ܶ ◌ܺ ◌ܽ
入力法が分かりにくい文字
; J I X V
ܚ ܛ ܥ ܨ ܫ
入力法が分かりにくい句読点・記号
Shift+, Shift+\ Shift+3
، : ̥
Shift+I Shift+L Shift+P
̈ ̱ ̇

入力キーは標準101配列(Windows 104配列)の場合。; は [L] の右のキーで、JIS配列でも恐らく同じキー。\ キーは、JIS配列では多分 [¥] と [ろ] の両方に相当すると(どちらでも同じだと)思われる。機種によって多少違うかもしれない。

Windows の場合、キーボード・レイアウトを切り替えるショートカット(左Alt+Shift+数字)も設定しておくといい。IMEのオンオフと同様の感覚で、気軽にレイアウトを切り替えながら入力できるようになる。

一般のエディタ上では、右から左に進むシリア文字をうまく表示させるのは(とくに左から右の文字と混在させるのは)難しいかもしれない。一つの解決法は、高機能なワープロソフトを使うことだろう(Word はシリア語を自動認識してくれる)。もし可能なら、テキストエディタを使い、HTMLでタイプしてブラウザで表示させるようにすると、軽くて小回りが利く。

学習の進め方の例として、コンピュータ上でカラバシのテキストを1行ずつタイプして書き写す、ということが考えられる。1語ずつ意味と発音を確認し、文の意味が理解できたら次へ進む。進度は1日1行でも1日半ページでも、何度か復習しているうち、だんだんすらすら音読できるようになるだろう。できればこの注解を見ながらカラバシを読むのではなく、自力で課を終わらせるごとにその課の注を確認するとよい。

ローマ字表記と発音

この注解のローマ字表記は、古典シリア語としての一応の発音を示すもの。表記法は、CALPeshitta Tool の方式と高い互換性があり、基本的には普通にローマ字読みすればよい。

母音は、基本的にはローマ字読み。aā だけは単純な短音・長音の違いではなく、前者は /a/ となり(英語の cat の母音とほぼ同じ)、後者は /ɑ(ː)/ となる(英語の father の最初の母音と同じ。ただし、西方言では [ɔ(ː)] のように発音される)。

[2014-02-16追記] eē も、一般には、長短だけではなく母音の質が異なっていた可能性が高いが、古典期の正確は発音は判明していない。当面、e / ē については、単純に [e] / [eː] と考えるのが最適近似となる(詳細は、補足説明の「a/ā/e/ē について」を参照)。厳密に言えば、全ての短音・長音ペア(例えば uū)は、母音の質が微妙に異なっていた可能性がある。

è という表記について [2014-03-02追記][2014-06-08変更]

標準的な古典シリア語では、短い e は音素として1種類しかない。この音素は、①多くの場合、東方言の i に当たるが、②いくつかのケースでは東方言でも e になる。この注解では、①と②を区別して表記している(2014年6月9日以降、②については、重アクセント記号を付けて è で表す)。①と②は東方言特有の区別であり、一般的にはこのアクセント記号は無視してよい。これは、短母音 e と長母音 ē の区別(無視できない)とは別の問題だ。

カラバシの母音記号の付け方

つまり、この教科書では、ある文字に母音 ā が付く場合、もし後続する文字が ܐ なら、その ā を表す母音記号  ܳ は省略される。同様に、文字 ܘ が後続する場合、ū(または u/ō/o)を表す母音記号  ܽ は省略され、文字 ܝ が後続する場合、ī は表す母音記号  ܺ は省略される。

最初は「母音記号が全部書いてない=手ごわい」と感じるかもしれないが、上記の単純な規則に従っているだけで、すぐ慣れてしまう。慣れると、むしろスッキリして見やすい。なくてもいい母音記号に煩わされずに注意すべき母音に集中できるし、「母音記号なしの表記」への自然な橋渡しともなりうる。

第1課 Hergā Qaḏmāyā

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本文(文章の前の部分)
ܗܶܪܓܐ
発音hergā
意味「学習」
解説ここでは「レッスン」という意味。
ܗܐ
発音
意味「ほら」
解説相手の注意を引くための間投詞。
ܗܘ
発音
意味「彼」
解説カナダ版では、冒頭の単語コーナーにおいて、この単語が ܗܰܘ (haw)「あの」に置き換わっている(誤植)。
ܗܳܢܐ
発音🔊 hānā
意味「これは、この」(男性形)
解説ā は、古典シリア語では [ɑ(ː)] のように発音される。英語の father の最初の母音と同じ(後舌母音)。
ܗܳܕܶܐ
発音🔊 hāḏē /hɑ(ː).ðeː/
意味「これは、この」(女性形)
解説◌ܶܐē を表す。カラバシでは d の硬音・軟音は区別して表記されていないが、古典シリア語では硬軟が区別される。
ܐܰܚܐ
発音🔊 ʾaā /(ʔ)aħ.ħɑ(ː)/ または​ ʾaā
意味「兄、弟」
解説aā とは別の種類の音で、大ざっぱに、英語の cat の母音に当たる。音声ファイルは東方言のもので、[χ] と発音されている。
ܚܳܬ̥ܐ
発音🔊 āṯā /ħɑ(ː)θɑ(ː)/
意味「姉、妹」
解説音声ファイルは東方言のもので [χ] と発音されている。カラバシでは、文字の下の小さな白丸が軟音を表す。以下では、説明の便宜上、この小円を軟音記号と呼ぶ。入力法は Shift+3
ܩܰܢܝܐ
発音qanyā
意味「ペン」
解説カラバシの書き方では、母音記号なしの子音の後ろに ـܝܐ がある場合、「子音 + īʾ」とも読めてしまうが、そうはならない。必ず「子音 + 」になる。
ܠܘܚܐ
発音ā
意味「(文字を書くための)板、黒板」
解説この場合、学習玩具のような小型の黒板だろう。
本文(文章の部分)
ܗܳܢܐ ܐܰܚܐ.
発音hānā ʾaā
意味「これは兄(または弟)です」
解説シリア語では、英語のbe動詞に当たるものは必須ではない。
ܐܝܬ̥ ܠܶܗ
発音(ʾ)īṯ lèh /(ʔ)iːθ leh/
意味「彼に~が存在する」、「(彼は)~を持つ」、「(男性名詞)には~がある」
解説ܐܝܬ̥ は所有や存在を表す表現で、「います、あります」という意味。単数・複数などによって変化しない。その後ろにあるのは ܠ(「~に」という意味の前置詞) + 3人称単数男性の所有語尾(前置詞の目的語に当たる)。
補足[2014-03-02追記] è のアクセント記号は、東方言での発音の区別を表すもの。通常の古典シリア語としては「eè は同じ」と考えてよい。
ܐܝܬ̥ ܠܳܗ̇
発音(ʾ)īṯ lāh
意味「(彼女は)~を持つ、(女性名詞)には~がある」
解説ܐܝܬ̥ ܠܶܗ と同じ構文で、所有語尾だけ女性形に置き換わっている。慣習として、3人称単数女性の所有語尾の ܗ には、上に点を付けることが多い。シリア文字では、見た目がほとんど同じ「上に付く点」が何種類もあるが、この場合、Unicode で言うと U+0307 COMBINING DOT ABOVE に当たる。入力法は Shift+P
ܗܘ ܐܰܚܐ
発音hū ʾaā
意味「この兄は」
解説直訳的には「彼、(つまり)兄は」。
ܪܰܒ ܡܶܢ
発音rab men
意味「~より大きいです、~より年上です」
解説
  1. 主語が男性なので、形容詞は男性形になっている。シリア語では、語形上、形容詞の原級・比較級の区別はない。比較を表す文脈では — 例えば、ܡܶܢ「~より」が後続する場合 — そのままの語形で比較級のような意味になる。
  2. ܐܰܚܐ は「兄」または「弟」を表す。「兄の方が妹より年上です」と訳すと当たり前で変だが、本来の意味は「この男のきょうだいは、女のきょうだいより大きい」。
  3. 西シリア文字の ܒـ (b) は、東シリア文字の ܟـ (k) と紛らわしいので注意。
補足[2013-12-10訂正] ܪܰܒ は、方言によっては raḇ /rav/ と発音されるが、シリア語での本来の発音は rab /rab/ である(Nöld. §23H, §146)。つまり、b は硬音。
ܛܳܒܐ
発音āḇā /tˤɑ(ː).vɑ(ː)/
意味「良いです、善良です、親切です」(女性形)
補足[2013-12-10追記] カラバシでは b の硬音・軟音は区別して表記されていないが、古典シリア語では硬軟が区別される。
質問
ܫܽـ̈ܘܳܐܠܶܐ
発音šuwwālē /ʃuw.wɑ(ː).leː/古形 *šuʾʾālē
意味「質問(複数)」
解説
  1. ウムラウトのような記号はセヤメs(ə)yāmē)と呼ばれ、その単語が複数形であることを表す(Unicode ではウムラウトと同じコードポイント)。入力法は Shift+I。セヤメを付ける場所に明確な決まりはないが、通常、背の低い文字の上に付ける。母音記号と2段重ねにして ܫܽـܘ̈ܳܐܠܶܐ と書いてよい。
  2. 字形的に文字と文字が横棒で結ばれているときは、その横棒の上(つまり文字と文字の間)にセヤメを置くこともある。コンピュータ上でこのように表示させたい場合、セヤメを付けたい場所(文字間)で Shift+J とタイプすると横棒が延長されるので、その延長された部分の上にセヤメを付ければいい。ただし、この方法はテキスト検索の妨げになる(ソフトウェアによってはこの点をうまく処理してくれるものもあるが、一般には問題が生じる)
  3. ܠܐܠـܐ を表す合字。
  4. 基本的に名詞単数形は末尾が ā だが、複数形では末尾が ē に変わる。
ܦܰܢܐ
発音pannā
意味「返しなさい、返答しなさい」
ܒܝܰܕ
発音b(ə)yaḏ
意味「~を使って、~によって」
ܐܰܝܢܰܐ ܗ̱ܘ
発音ʾaynaw /(ʔ)aj.naw/
意味「どれが~(男性名詞)ですか」
解説
  1. 下線は黙字を表す。つまり、ܗ̱ܘ は単に ܘ (w) と発音される。
  2. ܗ̱ܘ (-w) は ܗܘ () 「彼」が弱まったもので、前の語とつなげて1語のように発音される。「彼」という本来の意味は失われ、単に「英語の is に当たるもの」の男性形として働く。
  3. ܐܰܝܢܰܐ (ʾayna) 「どれ、どちら」(男性形)の単独での発音は ܐܰܝܢܐ (ʾaynā)。実際、直後に ܐܰܝܢܐ ܪܰܒ (ʾaynā rab) という例がある。ところが、この単語は、ܗ̱ܘ の直前では ܐܰܝܢܰܐ (ʾayna) と短縮される。つまり、末尾の ā /ɑ(ː)/a /a/ に変化する。(参考: 東方言ではこの変化は起きず、​ʾaynā + -w は単に ʾaynāw と発音される。)
  4. シリア文字の下線は、Unicode 規格書では U+0320 COMBINING MINUS SIGN BELOW となっているが、実際には(現在の実装では) U+0331 COMBINING MACRON BELOW で表現される。入力法は Shift+L
ܐܰܝܕܐ ܗ̱ܝ
発音ʾaydāy /(ʔ)aj.dɑ(ː)j/
意味「どれが~(女性名詞)ですか」
解説
  1. ܗ̱ܝ (-y) は ܗܝ () 「彼女」が弱まったもので、「英語の is に当たるもの」の女性形として働く。前の語とつなげて1語のように発音される。(参考: この表現は、東方言では​ ʾayday と発音される。)
  2. 「英語の is に当たるもの」に男性形・女性形の区別があるだけでなく、「どれが、どちらが」という疑問詞にも男性形 ܐܰܝܢܐ (ʾaynā) と、女性形 ܐܰܝܕܐ (ʾaydā) の区別がある。
ܒܗܘܢ
発音b(ə)hōn
意味「彼らの中で」
解説
  1. ܒ + 所有語尾・3人称複数男性。
  2. この記事において(CAL においても)ō は広めの ū のことで、「西方言における ā の発音」という意味ではない。
  3. 西方言では ūō の区別がない。西シリア文字では ūō も同じ母音記号で表される(カラバシのスタイルでは母音記号が省略されるパターンに当たる)。古典シリア語においては ūō の区別があるが、発音が ō になるケースは比較的少ない。
ܠܰܟܬ̥ܝܒܬܐ
発音laḵṯīḇtā /lax.θiːv.tɑ(ː)/
意味ܠ「~のために」 + 「書かれるもの、筆記」。全体として「書き取り課題」というほどの意味。
解説
  1. ܠ のような1文字の前置詞は、後続する単語とつなげて書かれる。つまり、接頭辞として機能する。その際、後続する単語が2個の子音で始まる場合は、つなぎの母音 a が挿入される(ܠܰـ)。
  2. ܟܬ̥ܝܒܬܐ (kṯīḇtā)「筆記」を単独で発音する場合、語頭の子音は硬音(語頭に軟音は来ない)。上記のように接頭辞が前に付くと、語頭だった子音は語頭でなくなり発音も軟音に変わる。
  3. この語句は合計3個の軟音を含んでいるが、カラバシでは軟音記号が1個しか付いていない。一般に、シリア文字では、全ての軟音が記号として明示されるとは限らず、硬軟の区別を一切表記しないことも多い。実際、カナダ版では、この単語の軟音記号が完全に省略されることがある。
  4. ほとんどの場合、硬音・軟音の使い分けは単純な規則に従っており(第16課で説明)、明示されていなくても簡単に判断できるので心配は要らない。
  5. 書き取りの具体的方法: 手書きする場合、Syriac Orthodox Church in Canada - Learn SyriacLesson - 2 が参考になる。
ܕܳܕܐ
発音dāḏā
意味「父方のおじ、おじさん」
ܚܘܪ
発音ūr
意味「(注意して)見てください」

第2課 Hergā Trayyānā

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本文
ܡܘܢ
発音mōn
意味「何が、何を」
ܙܰܐܗܝ
発音za(ʾ)hī
意味男性名
ܟܬ̥ܳܒܐ
発音🔊 kṯāḇā /kθɑ(ː)vɑ(ː)/
意味「本」
解説
  1. 単語が連続2子音で始まる場合: ①もし2個目の子音に硬軟の区別があるなら、その子音は軟音になる。②2子音の間に曖昧母音を挿入して kəṯāḇā のように発音することがある。
  2. この単語では b も軟音。音声ファイルは東方言のもので、軟音 [w] と発音されている。
ܬܐ
発音
意味「来なさい」
補足[2014-04-27追記] 大筋において、新約聖書「コリントの信徒への手紙一」にある「主を愛さない者は、神から見捨てられるがいい。マラナ・タ(主よ、来てください)」の「タ」に当たる。ただし、シリア語聖書では命令形ではなく完了形。「…愛さない者は、のろわれてあれ。主は、既に来た」となっている。
ܚܙܝ
発音(ə)zī
意味「見なさい」
ܨܶܦܪܐ
発音ep(p)rā /sˤep.(p)rɑ(ː)/
意味「小鳥、スズメ」
解説一般に、動物を表す名詞は、実際の雄・雌によって男性名詞にも女性名詞にもなる。しかし、中にはデフォルトでどちらになるか決まっているものもある。「小鳥」もその例で女性名詞。
ܝܳܬ̥ܒܐ
発音yāṯbā
意味「(枝の上に)止まっています」
解説語根 YTB の動詞「座る」の能動分詞・女性単数形。以下、能動分詞のことを単に分詞と呼ぶ。シリア語の分詞は、動詞の現在形・現在進行形の役割を果たす。
ܓܰܡܠܐ
発音gamlā
意味「ラクダ」
解説デフォルトで男性名詞。 ܠܐܠـܐ を表す合字。
ܪܳܥܶܐ
発音rāʕē
意味「食べています」
解説語根 RʕY の動詞「(草を)食む、のんびりと食べる、餌とする」の分詞・男性単数形。
ܓܶܠܐ
発音gellā
意味「(干し)草、わら」
参考になる音声ファイル
ܓܰܡܠܐ ܐܶܟ̥ܰܠ ܓܶܠܐ.
発音🔊 gamlā ʾeḵal gellā (gamlā ʾiḵḵal gillā) [ɡæm.lɑ(ː) ʔex.xæl ɡɪl.lɑ(ː)]
意味「ラクダは(干し)草を食べました」
解説
  1. この課の ܓܰܡܠܐ ܪܳܥܶܐ ܓܶܠܐ. と似た例文。2語目が別の単語「食べました」になっている以外は全く同じ。
  2. a の実際の発音は、しばしば [æ][ɛ] になる。
  3. この録音では軟音の が二重化されているが(現代の東方言における文語シリア語の発音)、古典シリア語の本来の発音は​ ʾeḵal。古典では、軟音は決して二重化されない
  4. ܐܶܟ̥ܰܠ (ʾeḵal) はカラバシ第1巻では使われないが、同じ動詞の分詞「食べます」ܐܳܟ̥ܶܠ (ʾāḵel) が第10課で登場する。
質問
ܚܰܘܐ
発音awwā = 東方言 āwwā
意味「見せなさい、示しなさい」
ܡܶـ̈ܠܐ
発音mellē
意味「言葉(複数形)」
解説
  1. セヤメを母音記号と2段重ねにして ܡ̈ܶܠܐ と書いてよい。
  2. セヤメがある場合、原則として語尾の ܐē と発音される。母音記号を明示するなら ܡ̈ܶܠܶܐ だが、セヤメがあれば(=複数形では)、母音記号が明示されていなくても発音は同じ。カラバシの教科書では、このパターンでは普通は母音記号が省略される。
ܡܽܘܢ
発音mōn
解説この教科書の原則からすれば1文字目の母音記号は省略されるはずだが(実際、冒頭の単語コーナーではそうなっていた)、ここでは表記されている。 発音・意味に違いはない。
ܫܰܠܶܡ
発音šallem
意味「完成させなさい」
ܦܶܬ̥ܓ̥ܳܡ̈ܐ
発音peṯāmē /peθ.ɣɑ(ː).meː/
意味「語句、行」(複数形)
解説
  1. カナダ版では、この単語の軟音記号の一つまたは両方が省略されることが多い。
  2. これは「完成させなさい」の目的語。目的語の前には、しばしば ܠ が置かれる(目的語とくっつけて1語のように表記される)。その際、語頭の硬音が軟音に変わって、l(ə)-eṯāmē /l(ə)feθ.ɣɑ(ː).meː/ と発音される。
補足[2013-12-10追記] カラバシでは p の硬音・軟音は区別して表記されていないが(彼の方言では常に軟音だったようだ)、古典シリア語では硬軟が区別される。
[2014-04-27追記] この単語は古代ペルシャ語からの外来語であり、普通のシリア語にはない音の組み合わせを含んでいる(Nöld. §25)。
ܟܳܬ̥ܶܒ
発音kāṯèḇ
意味「書きます、書き取ります」
解説分詞・男性単数形。
ܟܶܪܟܐ
発音kerkā
意味「ノート」
解説本来の意味は「巻かれた紙、巻き物」。男性名詞。
ܢܰܩܕܐ
発音naqdā
意味「きれいな~」(男性形)
解説「ノート」を修飾する。形容詞は名詞の後ろに置かれることが多い。ただし、英語のように、名詞の前に置くことも可能。

第3課 Hergā da-Ṯlāṯā

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本文
ܓܘܒܐ
発音gubbā
意味「水の穴、水ため、井戸」
ܣܰܓܝ
発音saggī
意味「大いに、とても」
ܚܰܠܒܐ
発音alḇā
意味「ミルク」
解説b が軟音である点に注意。基本的に子音の後ろに軟音は来ないが、このような例外もある(Nöld. §94C)。
ܫܳܬܶܐ
発音šāṯē /ʃɑ(ː).θeː/
解説語根 ŠTY 「飲む」の分詞・男性単数形。この場合 t は軟音になるが、カラバシは一貫して軟音記号を付けていない。方言差かもしれない。
ܒܳܒܐ
発音bāḇā
意味「乳幼児、ちびくん」
解説ܒܳܒܘܣܐ (bāḇō)「小さな男の子」の愛称形。由緒ある古典シリア語だが、一般的なシリア語辞典には載っていない(→ 単語の背景)。
ܡܘܙܐ
発音mūzā
意味「バナナ」
解説
  1. Jess. などの辞書には、この単語は載っていない(→ 単語の背景)。
  2. [2013-12-08追記] この単語のように、文字ワウ (waw = 東方言 wāw) ܘ に母音記号が付いていない場合、もしその直前にも「母音記号が付いていない文字」があるなら、その ܘ は原則として母音を表す。既出の ܠܘܚܐ (ā) や ܚܘܪ (ūr) も同じパターンで、いずれも ܘū を表している。(言い換えると、カラバシ式の表記では、このような場合、ܘ の直前の文字に付く母音記号 ◌ܽ が省略されている。母音記号を省略しなければ、ܡܽܘܙܳܐ とか ܠܽܘܚܳܐ とか ܚܽܘܪ のようになる。)
  3. ܘ が表す母音は ū または ō、もしくはその短音 u または o だが、どれになるかは単語によって異なる。実際には ū であることが多い。以下、この文字が ū を表す場合は原則として注記しない。例えば、第4課の ܛܘܪܐ「山」、第15課の ܢܘܢܐ「魚」には何も注が付いていないが、発音はそれぞれ ūrānūnā となる。
ܐܝܬ̥ ܒܶܗ
発音(ʾ)īṯ bèh
意味「それ(男性名詞を受ける)の中には~があります」
解説ܐܝܬ̥ ܠܶܗ と同様の構文で、前置詞 ܒ を使ったもの。
ܡܰـ̈ܝܳܐ
発音🔊 mayyā /maj.jɑ(ː)/
意味「水」
解説
  1. [2013-12-22更新] この単語は複数名詞。セヤメがあるのは、そのため。シリア語では「水」は常に複数扱いされ、単数形は存在しない。
  2. セヤメがあっても、他の母音記号が明示されている場合、語尾の発音は ē にならない。
  3. セヤメを母音記号と2段重ねにして ܡܰܝ̈ܳܐ と書いてよい。
補足[2014-04-27追記] ay /aj/ は、実際には二重母音として発音される。この音声ファイルでは [ɛɪ] のように発音されている。
質問
ܟܽܠ
発音kol または kul
意味「全ての、それぞれの」
解説
  1. この単語には、kol / kul の2種類の発音法があり、どちらの発音も一般的。
  2. 古典シリア語の母音 ū/u/ō/o は、ほとんどの場合、西シリア文字では ܘ で表される(従ってカラバシ方式では母音記号が必要ない)。 ܟܽܠ は、この原則の例外に当たる。
ܝܘܡ
発音yōm
意味「日」
解説ܟܽܠ ܝܘܡ (kol yōm または kul yōm) は、「毎日」という意味の副詞句。

第4課 Hergā d-Arbʕā

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本文
ܦܘܡܐ
発音pūmā
意味「口」
解説この単語は、この課では使われない(第14課の演習で使われる)。
ܦܝܠܐ
発音 (🔊 pīlā /piːlɑ(ː)/)
意味「象」
解説一般に ā は長母音と考えられているが、現実には短めに発音されることもある(特に語末)。
ܦܺܐܪ̈ܐ
発音pē西方言 pīrē
意味「果物(複数)」
解説
  1. つづりが ◌ܺܐ の場合、本来の母音は ē で、◌ܶܐ と同じ発音になる。後代の西方言ではこの母音は ī に変化しているが、古典シリア語としては ē と発音する必要がある。
  2. 一般にセヤメを付ける場所は自由だが、単語が文字レーシュ (Rēš) ܪ を含んでいる場合は、普通はその ܪ の上に付ける。この場合、ܪ の上にもともとある1個の点を取ってから、そこにセヤメの2個の点を付けるܪ̈。ラテン文字にウムラウトのような記号を付けるときの iï の関係に似ている。
ܗܳܢܐ ܦܝܠܐ ܪܰܒܐ.
発音hānā ¦pīlā rabbā
意味「これは、大きな象です」。「この象は、大きいです」ではない点に注意。
解説
  1. 第1課で「兄は大きいです」 ܐܰܚܐ ܪܰܒ (ʾaā rab) という表現を学んだ。もし「大きな兄」と言いたい場合、末尾が少し変わって ܐܰܚܐ ܪܰܒܐ (ʾaā rabbā) となる。
  2. シリア語の形容詞・男性形において、「大きな兄」のように名詞を修飾する形(限定用法=連体形)は、末尾に ܐ (ā) が付く。この形は、強調状態emphatic state)と呼ばれる。一方、「大きいです」のように言い切る形(叙述用法=終止形)では、末尾に ܐ が付かない。この形は、絶対状態absolute state)と呼ばれる。
  3. ローマ字表記中の破線 ¦ の意味は、「前の単語とつなげて速く読むとき、語頭の硬音 p が軟音 になることがある」。一般に、母音で終わる単語と硬音で始まる単語をつなげて読む場合、同じ現象が起きることがある(Nöld. §24)。以下、ローマ字表記した部分の中にこの組み合わせが含まれる場合、同様に破線でこれを示す。
参考女性形の場合は、絶対状態において末尾に ܐ が付いて、男性形の強調状態と同形になる。つまり、ܪܰܒܐ (rabbā) は、主語が女性なら「大きいです」と言い切る意味になる。しかし教科書の文では ܗܳܢܐ 「これは / この」が男性形なので、主語は男性形の象で、当然、形容詞も男性形。従って「大きな~」という限定用法になる。
補足[2014-04-27追記] 「強調状態」の「強調」は「限定的」という意味。文字通りに意味が強まるわけではない。
ܪܝܫܐ ܪܰܒܐ
発音rēšā rabbā西方言 rīšā rabbā
意味「大きな頭」
解説
  1. この ܪܰܒܐ も男性形・強調状態。
  2. 古典シリア語での発音 rēšā は、後代の西方言での発音 rīšā と一致しない。西シリア文字では後者のように表記されているが、古典シリア語としては、それを rēšā と読む必要がある。
  3. 第1課で ܛܳܒܐ (āḇā) という表現を学んだ。rabbā では b が二重になっているが、āḇā では b が二重になっていない。普通、二重になるのは短い母音の後だけで、先行する母音が長いときは二重にならない。硬軟の区別がある子音の場合、このようなパターンでは、二重になる子音は必ず硬音になり、二重にならない子音は軟音になる。
質問
ܐܰܝܟܐ ܐܝܬ̥
発音ʾaykā (ʾ)īṯ
意味「どこにありますか、どこにいますか」
解説カナダ版では軟音記号が省略されている。
ܦܝܠܐ ܪܰܒ
発音pīlā rab
意味「象は大きい」
解説ܪܰܒ が男性形・絶対状態(叙述用法)である点に注意。
ܡܐ ܪܰܒ ܦܝܠܐ ܗܳܢܐ.
発音mā rab pīlā hānā
意味「何てこの象は大きいのでしょう」
解説
  1. 「この」のような指示代名詞は、名詞の前に置くことも後ろに置くこともできる。
  2. 既出の「これは大きな象です」ܗܳܢܐ ܦܝܠܐ ܪܰܒܐ. との違いに注意。 ܪܰܒ は単独で「大きいです」という意味の述語になるが、ܪܰܒܐ は隣接する名詞を修飾して「大きな~」という意味になる。

第5課 Hergā d-Ḥamšā

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本文
ܐܰܝܠܶܝܢ
発音🔊 ʾaylēn
意味「どれが」(複数形・通性)
解説
  1. 通性とは、男性形と女性形が同形で、同じ単語がそのどちらとしても使われること。
  2. ay /aj/ は、実際には二重母音として発音される。この音声ファイルでは [ɛɪ] のように発音されている。
  3. ◌ܶܝ は長い ē を表す。
ܒܰܣܝܡ
発音bassīm
意味「甘い、香りが良い、心地良い」
ܐܶܢܶܝܢ
発音ʾennēn
意味ܗܶܢܶܝܢ (hennēn) 「彼女たち」が弱まった形で、「be動詞に当たるもの」の3人称複数・女性形として使われる。
解説前の語とつなげて1語のように発音される。
ܐܳܦ
発音ʾā /(ʔ)ɑ(ː)f/
意味「さらに、また、おまけに~まで」
ܡܘܙܐ ܒܰܣܝܡ
発音mūzā ¦bassīm
意味「バナナは甘いです」
解説男性形・絶対状態。
ܬܺܐܢ̈ܐ
発音tē西方言 tīnē
意味「イチジク(複数)」
解説女性名詞。
ܣܰܬܐ
発音sattā
意味「つる、つる植物」
解説女性名詞(CAL はこれを男性名詞としているが誤り)
ܥܶܢܒ̈ܐ
発音ʕenḇē
意味「ブドウ(複数)」
解説女性名詞。b が軟音である点に注意。基本的に子音の後ろに軟音は来ないが、このような例外もある(Nöld. §81)。
質問

第6課 Hergā de-Štā

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本文
ܣܰܬ̥ܘܐ
発音🔊 saṯwā
意味「冬」
解説カラバシ式の表記法だと、「母音記号なしの文字」の後ろに ܘܐ‎ がある場合には「子音 + ūʾ」とも読めてしまうが、実際にはそうはならない。必ず「子音 + 」と読む。言い換えると、このような ܘ‎ は子音 w を表す。
ܬܳܩܶܦ
発音tāqè
意味「強くなります」
解説
  1. 語根 TQP。基本的に、分詞の男性単数形は -ā-è- となる。同じパターンの分詞 ܟܳܬ̥ܶܒ (kāṯèḇ)「彼は書きます」を既に学んだ。
  2. 一般に、単語が子音で終わる場合、その子音は(硬軟の区別があれば)軟音になる。 ܐܝܬ̥ ((ʾ)īṯ) や ܐܳܦ (ʾā) も同じこと。 ܪܰܒ (rab) は例外。
ܐܶܙܰܠ
発音ʾezal
意味「行った」
解説
  1. 完了形・3人称単数男性。語根​ ʾZL。
  2. シリア語の語順は非常に自由。この文では動詞が主語の前にある。
補足[2014-01-19修正] しばしば​ ʾezzal と発音されるが、それは後代の発音で、​ʾezal が本来のようだ。
ܐܶܬ̥ܐ
発音ʾeṯā
意味「来た」
解説完了形・3人称単数男性。語根​ ʾTY。
ܒܩܰܝܛܐ
発音b(ə)qayā
意味「夏に(は)」
解説前置詞 ܒ‎ は、後続する単語とつなげて書かれる。以下いちいち注記しないが、ܒ‎ で始まる語句は常にこの可能性を持つ。
ܚܘܡܐ
発音ummā
意味「暑さ、(太陽の)熱」
ܘܣܳܓܶܝܢ
発音w(ə)sāēn
意味「そして多くなります」
解説
  1. 接続詞 ܘ‎ は、後続する単語とつなげて書かれる。以下いちいち注記しないが、ܘ‎ で始まる語句は常にこの可能性を持つ。 ܣܳܓܶܝܢ (ēn) は、語根 SGY の分詞・男性複数形(カラバシでは g に軟音記号が付いていない)。
  2. 既出の ܣܰܓܝ (saggī) 「たくさん、たっぷり」は、同じ語根の派生語。
ܩܘܪܐ‎
発音qurrā
意味「寒さ」
解説ܩ‎ (q) と ܘ‎ (w) の違いに注意。前者は左側につながるが、後者はつながらない。
注意
この課の背景

著者カラバシのいたカミシリ(シリア北東部)では、冬には雨や雪が降るが、7~9月にほとんど降水がない(平均降水日数ゼロ)。この描写は、東方言地域には必ずしも当てはまらない。イラン北部のウルミエでは夏に雨が降る。

質問
ܐܶܡܰܬ̥ܝ̱‎‎
発音ʾemmaṯ
意味「いつ」
解説古い発音の名残で、末尾に文字ヨード (Yōḏ) ܝ が付いている(西暦200年ごろには既に発音されなくなっていた)。古典シリア語ではこの単語の ܝ‎ は黙字(Nöld. §50A (5))。
ܕܩܰܝܛܐ
発音d(ə)qayā
意味「夏の」
解説前置詞 ܕ は、後続する単語とつなげて書かれる。以下いちいち注記しないが、ܕ‎ で始まる語句は常にこの可能性を持つ。
注意

第7課 Hergā d-Šaḇʕā

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本文
ܫܶܡ
発音šem
意味男性名詞「名前」の構成状態construct state)。後続する名詞・名詞句と直接結合して「~の名前」という意味になる。
解説
  1. シリア語の名詞・形容詞には、絶対・構成・強調の3状態がある。男性名詞では通常、絶対状態と構成状態は同形。
  2. 「名前」の強調状態は ‎ܫܡܐ (šmā) — 形容詞の強調状態と同様に、末尾に ‎ܐ が付く。この例では、絶対状態=構成状態における母音 e を除去して末尾に ā を付けると強調状態になる。
  3. シリア語の名詞は、特別な場合を除き常に強調状態で使われる。実際、既出の名詞はほとんど全て強調状態であり、末尾に ‎ܐ が付いている。一方、形容詞は、既に見たように、絶対状態と強調状態の両方で用いられ、状態によって異なる機能を持つ。
補足[2014-01-26追記] 名詞も形容詞も、女性単数の場合は、絶対状態・強調状態の両方で末尾に ‎ܐ が付く。それを別にすれば、一般に、末尾の ‎ܐ は強調状態を表す。
ܥܰܡܗܘܢ
発音ʕamhōn
意味「彼らと一緒に、それらとともに」
解説‎ܥܰܡ + 所有語尾・3人称複数男性。
ܨܶܡܕܐ
発音emdā
意味「かばん」
ܫܶܡ ܛܰܠܝܐ ܗܳܢܐ
発音šem alyā hānā
意味「この少年の名前」
ܐܰܕܰܝ
発音ʾadday または​ ʾaḏay
意味男性名
ܣܰܪܐ
発音sa(r)rā
意味女性名
解説カナダ版では1カ所 ‎ܣܰܪܳܐ となっているが、意味・発音に違いはない。
ܐܝܬ̥ ܥܰܡܗܘܢ ܨܶܡܕܐ.
発音(ʾ)īṯ ʕamhōn emdā
意味「彼らは、かばんを持ち歩いています」
解説直訳は「彼らと一緒にかばん(単数)があります」。文脈上「彼らは、それぞれ自分のかばんを持ち歩いています」と解釈する必要がある。
質問
ܐܶܢܘܢ
発音ʾennōn
解説ܗܶܢܘܢ (hennōn) 「彼ら」が弱まった形で、「be動詞に当たるもの」の3人称複数・男性形として使われる。前の語とつなげて1語のように発音される。
ܚܰܘܐ ܠܝ
発音awwā lī
意味「私に見せてください(ますか)」
解説教室で教師が生徒に言うという想定の質問。 ܠܝ は前置詞 + 所有語尾・1人称単数(通性)。
ܡܳܢܳܐ ܐܝܬ̥
発音mānā (ʾ)īṯ
意味「何がありますか」
解説米国版では1カ所でこの表記が用いられている。カラバシのスタイルでは、本来二つ目の母音記号は不要。
ܟܽܠ ܚܰܕ
発音kol aḏ または kul aḏ
意味「各自、それぞれの人」
解説直訳的には「それぞれの一つ」。
ܒܶܗ ܒܟܽܠ ܨܶܡܕܐ
発音bèh b(ə)ḵol emdā または bèh b(ə)ḵul emdā
意味「その一つ一つのかばんの中には」
解説
  1. 直訳的には「その中に、(つまり)それぞれのかばんの中に」。
  2. ܟܽܠ の発音に注意: ܒ が前に付くとき、語頭の硬音 k は軟音に変化する。
ܛܰܠܝܐ ܛܳܒܐ
発音alyā āḇā
意味「善良な少年」
解説ܛܳܒܐ は男性形・強調状態(限定的)。「アッダイは良い少年で…」というほどの意味。下記「注意」参照。
ܚܳܬ̥ܶܗ
発音āṯèh
意味「彼の妹」
解説シリア語の名詞は、ܚܳܬ̥ܐ (āṯā)「妹」のように ܐ (ā) で終わるのが基本 — つまり、強調状態の語尾が付いている。名詞に所有語尾(この例では3人称単数男性の -èh)を付ける場合、その ܐ を取ってから所有語尾を付ける。
注意

第8課~第21課と補足説明

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別ページ

付録1: シリア語の辞書と参考書

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辞書

[CAL] オンライン辞書として、The Comprehensive Aramaic Lexicon (CAL) が役立つ。トップページから、Search the CAL lexical and textual databasesBROWSE THE LEXICON とたどると検索フォームが現れる。ローマ字入力でも検索できるほか、シリア文字をコピペした場合、母音記号があってもなくても正しく検索できる。注意点として、強調状態を表す ܐ で終わっている単語は、それを取った形で検索する必要がある。前方一致でヒットするので、分からないときは後ろを削って最初の数文字だけで検索するといい。ローマ字入力で検索する場合、母音は入力しても無視されるので、子音だけ入力すれば足りる。

CALは名前の通り「包括的なアラム語辞典」であり、シリア語専用ではない。シリア語辞典として使うには、Com. または Syr. の欄を見ればよい。CAL のローマ字表記はアラム語の発音であり、古典シリア語の発音とはわずかに異なる場合がある。CALは継続中のプロジェクトであり、完成されたものではない。多少の不備も含まれている。

CALは、それ自体に辞書機能があるだけでなくメタ辞書にもなっていて、他のオンライン辞書の該当ページへのリンクも表示してくれる(このリンクは100%正確とは限らない。いろいろな事情で前後のページを見る必要がある場合もある)。

[Jess.] メタ辞書では、まず J. Payne-Smith: A Compendious Syriac Dictionary を選択するといい。これは、ロバート・ペイン゠スミスRobert Payne Smith)博士が作ったシリア語大辞典 Thesaurus Syriacus(第1巻1879年・第2巻1901年)を基に、娘のジェシーJessie Payne Margoliouth / 旧姓 Payne Smith)が作成した簡約版(1903年)。オリジナルの大辞典は専門家向けで本文もラテン語だが、簡約版は本文が英語で、一般の利用者が使いやすいように整理されている。Jessie という呼び方はなれなれしく失礼かもしれないが、どちらの著者も名字が Payne Smith で紛らわしいため、ここではこの辞書を Jessie (略して Jess.)と呼ぶことにする。

Dukhrana Biblical Research では上記 Jess. を直接検索できる。ローマ字またはシリア文字で探したい単語を入力すると、自動的に対応するページを開いてくれる。CAL経由の方が画質が良い。

Internet Archive でも同じ辞書を利用できる。「単語を入力すると自動的にページを開いてくれる機能」はなく、自分でページをめくる必要があるが、その代わり高品質のページ画像が利用できる(拡大表示も可能)。さらに全体を一つのファイルとしてダウンロードできる*1

[2014-01-26追記] Jess. のスキャンは何種類かあるが、2014年1月現在、2011年版BYU版)が最も高画質。21メガピクセルのデジカメを使って、400ドット/インチの解像度でデータ化されている。特に、DjVu(デジャブ、デイジャブ)版はわずか39 MiBで、ハイビジョンの8倍の精細度(1ページが3412×4977ピクセル)を持ち、英語部分の全文検索もできるので、2011年のDjVu版を推奨する(直リンク: 右クリック→保存)。DjVuファイルの閲覧に必要なソフトについては後述。PDF版はかなり重い。

[2014-02-09追記] dukhrana.com からリンクされているバージョン(2009年版)は解像度が低く、一般的な用途には向かない。ただし、文字認識の相性のため、2011年版と2009年版の一方でのみ文字が正しく認識されているケースがある。逆引きを徹底活用するなら、2009年のDjVu版もダウンロードしておいて、逆引きのときには両方検索するといい。2014年になって公開された​ “A high quality scan in DjVu format” は2009年版より高品質だが、2011年版には及ばない。しかもテキストデータが含まれていないため、全文検索ができない。次の画像は、バージョンによる品質の違いを対比したもの。

PNG画像233 KiB

[Costaz] セカンド・オピニオンが必要な場合、Louis Costaz の辞書(初版1963年)が使いやすい。基本的にはシリア語→フランス語辞典だが、英訳とアラビア語訳も付いている。こちらも Internet Archive からゲットできる。DjVu版も用意されている*2

*1 *2: DjVu版を含むいろいろなバージョンは「All Files: HTTPS」のリンクからダウンロードできる。テキストデータ付きのPDFは全文検索(シリア語部分は含まない)ができて便利だが、動作が重くなることがある。PDF版を使う場合、検索が必要なければ、テキストデータなしのバージョンを使った方がいい。DjVu版なら一般に全文検索ができ、しかも動作が軽い。

DjVuビューア

DjView がクロスプラットフォームで高機能だが、Windows用なら WinDjView が軽快で良い(どちらもオープンソース)。Caminova のブラウザ用プラグインにもスタンドアロンのDjVuビューアが付いてくるが、あまり使いやすくない。Sumatra PDF も DjVu に対応している。

一般に、「前景だけ」または「白黒」の表示を選択すると、描画が高速になる。そのようにすると、「裏のページが透けて見えることが原因で読み取り時に生じたもやもや」も除去できる。

WinDjViewFile | Settings | Display の設定ダイアログには、画質に影響する設定が2種類ある。(1) High quality… を有効にすると描画品質が上がるが、速度が低下する。速度低下が問題にならないほど高速なマシンなら、有効にするといいだろう。 (2) Subpixel… を有効にすると、主に液晶ディスプレイにおいて、文字輪郭の主観的滑らかさが増す場合がある。有効にしても特に遅くなるわけではないので、好みに応じて有効にすればよい。

[2014-02-23追記] 前記の辞書(2011年のスキャン)の DjVu版に対応した WinDjView 用のブックマークのデータを公開する(右クリック→保存)。WinDjView で辞書の .djvu ファイルを開き、File メニューからこの .bookmarks ファイルをインポートすると、次の画像の左側のようなブックマークが表示され、調べたい単語の1文字目に対応する場所にジャンプできるようになる(同じ文字から始まるエントリーが多い場合、中間地点でも頭出しができる)。.bookmarks ファイルはXML形式のテキストファイルであり、エディタで直接編集することも可能。

JPG画像198 KiB

参考書

[Nöld.] Theodor Nöldeke 著、James A. Crichton 訳、Compendious Syriac Grammar。文法のリファレンス。資料があるのはザクセン・アンハルト州ハレ(ドイツ)の図書館のサイトだが、ドイツ語を知らなくてもほぼ問題なく利用できる。拡大表示には JavaScript が必要。JavaScript を有効にすると、レスポンスが低下して挙動が怪しくなることがある。ウェブで読むのが手軽で解像度も最高だが(ズームした場合)、2013年10月以降、全ページを一つのPDFファイルとしてダウンロードできるようになった。テキスト検索もかけられて便利だ。

PDF版にはツリー表示可能なブックマークが付いていて、どのページでも一発で開けるようになっている。表示が一部ドイツ語なので、Seite [zaɪtə]=「ページ」と Tabelle [tabɛlə]=「(一覧表などの)表」だけは覚えておこう。

[Alan] Alan AldawoodThe Assyrian Aramaic Language Website(要 JavaScript注1)。もともとのサイトは消滅しているが、コンテンツがアーカイブされている。入門レベルのことが丁寧に記述されている。ペアル態の完了・未完了が出たあたりで中断しているが、実例豊富で参考になる記述が多い。東シリア語・文語が中心で、東シリア文字で記されている。音声ファイルの多くはリンク切れになっているが、残っているものも結構ある。この記事でリンクしている音声ファイルはここのもの。

注1: この資料がある web.archive.org は、不特定多数のウェブページのアーカイブ集。従って、このドメインに対して恒久的に JavaScript を許可することは任意のページのアーカイブ上で JavaScript を許可することに当たり、安全でない。

ツール

以下の二つはキリスト教関係のものだが、宗教と無関係に、語学的資料としても利用価値が高い。

Dukhrana Analytical Lexicon of the Syriac New Testament: シリア語新約聖書に出ている単語しか検索できないが、出ている単語は変化形で直接検索できる。「花」とか「本」とかの入門レベルの単語は確実に出ていて、いろいろな変化形が一覧表示される。ある単語がどういう文脈で使われるのか一覧表示する機能もある。硬音・軟音が区別して表示されるため*3、辞書以上に役立つことがある。

[Peshitta Tool] Peshitta New Testament: こちらでは、シリア語新約聖書の全部の節を表示できる。特に、ローマ字表記が参考になる*4

*3 *4: この表記が絶対というわけではない(シリア語にはいろいろな発音の仕方があるので)。

付録2: 東西の発音の違い

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ā の発音

ܗܳܢܐ (hānā) の母音 ā は、東方言では [ɑ(ː)] と発音され、西方言では [ɒ(ː)] または [ɔ(ː)] と発音される。これは、英語の lot の母音が、米国では [ɑ]、英国では [ɒ] と発音されるのとよく似ている。唇の丸めを伴うか伴わないかという問題だ。

どちらの発音を使うべきだろうか。例えば、ܗܳܢܐ を「ハーナ」のように発音するべきだろうか、それとも「ホーノ」のように発音するべきだろうか。

これは方言差であり、どちらが正しいかという問題ではないが、「ハーナ」の方が古典シリア語の発音に近く、普通に考えればこちらを使うのが当然だろう。他方、カラバシは西方言の教科書なので、それを西方言で読むというのも自然な発想だ。

āa の違いは、後舌の /ɑ(ː)/ と前舌の /a/ の違いであり、カタカナでいうと「2種類のアがある」ことになる。西方言なら、これが「オとアの区別」になる。その「ア」は前舌であり日本語の「ア」とは違うものの、結果的に、西方言の発音の方が日本語話者にとって親しみやすい面もある。ただし、西方言に基づく古典シリア語には別の落とし穴がある。 ܙܥܘܪܐ が​ “zʕōrō” になってしまうのだ。東方言の「2種類のア」がない代わり、「2種類のオ」ができてしまう。純粋な西方言としては zʕūrō だが、古典シリア語としては本来の ūō を区別する必要があり、zʕūrōūōそれとは別の区別であるため、紛らわしい。zʕōrā と考える方が見通しが良い。

東方言・西方言のどちらに準拠するにしても、しばらくするとそれが無意識の癖になってしまい後から切り替えるのは大変なので、どちらを使うか最初によく考える必要がある。この注解では ā[ɑ(ː)] のように扱っているが、ā[ɔ(ː)] のように読めば、おおむね西方言の発音となる(カラバシ自身の発音に近づけるためには、さらに p を全部、軟音 [f] で読む必要がある)。

東方言と西方言: もう一つの違い

通常、西方言では -w の前で、語尾の āa に変わる。東方言では、この変化は起きない。

ところが、東方言では -y の前で、語尾の āa に変わる。例えば、​ʾaydāy は​ ʾayday と発音される。つまり、ܐܲܝܕܵܐ ܗ̣݇‌ܝ ではなく ܐܲܝܕܲܐ ܗ̣݇‌ܝ となる。西方言では、この変化は起きない。

ā の圧縮 → West では -w の前、​“Yeast” (East) では -y の前」と覚えるといい。

古典シリア語として考えた場合、この点において、東西どちらの音変化を用いるべきだろうか。西方言の発音が広く用いられているが、理論的には、どちらの音変化も不採用とするべきかもしれない。しかし、この点に関してカラバシの教科書の読み方を変更することは簡単ではなく、混乱の原因になるため、この注解ではこの問題に踏み込まないことにした。

付録3: シリア語小史

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§1 紀元前3000~1000年ごろのメソポタミアの主要言語は、セム語系のアッカド語、および、それと共存した系統不明のシュメール語(シュメル語)だった。アッシリアでもバビロニアでも、アッカド語が公用語だった。一方、紀元前1000年ごろには、同じセム語だが別系統アラム語を話す人々が増えていた。紀元前8世紀には、古代アラム語は事実上の国際語となっていた。紀元前700年ごろから、アラム語は、新アッシリア帝国においてアッカド語と並んで公式に使われる言語の一つとなった(帝国アラム語)。後続する新バビロニア帝国でも、引き続きアラム語が使われた。

§2 紀元前539年、アケメネス朝ペルシャが新バビロニアを征服し、メソポタミアとシリアを含む広い範囲が同国の支配下に入った。紀元前500年ごろ、ペルシャ帝国のダレイオス1世は、この地域の行政に用いる言語としてアラム語を採用した。これにより、アラム語は広大な地域の共通語となった(狭義の帝国アラム語)。アケメネス朝は紀元前330年にギリシャに滅ぼされ、その後、セレウコス朝の支配が始まったが、アラム語は各地の言葉として存続した。

§3 紀元前132年、セレウコス朝の衰退を背景に、アラブ系とされる民族がエデッサ(現在のトルコ南東部、シャンルウルファを征服、そこを首都とするオスロエネ王国を建てた。住民の多くはアラム語話者だったらしく、この国では(少なくともある時点以降)アラム語が使われた。この「エデッサのアラム語」が、シリア語の出発点となる。

  1. 現存する最古のシリア語の銘文(オスロエネ王国)は、紀元6年のもの[リンク]
  2. 2~3世紀に、アラム語のエデッサ方言、つまりシリア語は、アラム語を話すキリスト教徒の共通語として重要度を増していった。アブガル王の伝説を持つエデッサは、彼らにとって「聖地」だった。福音書もシリア語に翻訳されて読まれたらしい。
  3. オスロエネ王国は、3世紀にローマ帝国に吸収された。
  4. 後代の東方言も、文語は西方言と共通の基盤を持っている。口語については、エデッサ以外の土地には当然その土地の方言があったはずだが、この時点では大きな方言差はなかったと考えられる。

§4 3~4世紀以降、古典シリア語文学が花開いた。「古典」といっても当時は話し言葉でもあった。4世紀にシリア語の正書法が整理され、5世紀初めまでには古典シリア文字(​ʾEsṭrangēlāが確立した。これは「ペシタ(ペシッタ)」と呼ばれるバージョンのシリア語聖書の成立(5世紀初めごろ)と同期しており、聖書の改訂を通じて正書法が確立したとも考えられる。4世紀には、既に東西の方言差が存在していた(Nöld. §37)。

  1. 3世紀にササン朝ペルシャが成立。メソポタミアはペルシャ文化圏に入った。シリア語圏の東部は、ここに含まれる。
  2. 一方、4世紀にローマ帝国の東側がいわゆるビザンティン帝国(ギリシャ語の国)となり、その一部だったシリアも、変化の影響を受けた。シリア語圏の西部は、ここに含まれる。
  3. キリスト教をめぐるささいな解釈の違いが発端となって、5世紀に、東シリア(東方教会)と西シリア(シリア正教)の分裂が生じた。シリア語の中心地だったエデッサの学校は、その影響で489年に閉鎖され、ペルシャのニシビス(現在のトルコ南東部ヌサイビンに移転。シリア語の東方言(ペルシャ領内)と西方言(ビザンティン領内)は、別々の道を歩み始めた。

[2013-12-15追記] 「生きた言語としてのシリア語」の黄金時代はおおむね4~6世紀であり、その時期のシリア語が狭義の古典シリア語に当たる。3世紀末も黄金時代に含めることができるが、3世紀には正書法が確立しておらず、シリア語はまだ若かった。一方、「アラブ(ムスリム)による征服前」という意味では7世紀初めも黄金時代の延長だが、実際には東シリア語・西シリア語の分裂が先行しており、7世紀が始まった時点では「古典シリア語という共通語」は既に過去のものとなっていた。

§5 7世紀になると、イスラム王朝が急激に勢力を広げた。ビザンティンの一部だったシリアも、ササン朝ペルシャの一部だったメソポタミアも、630年代にその支配下に入った。これ以降、シリア・メソポタミアではイスラム教徒の割合が増え、アラビア語の地位が高まった。シリア語は、話し言葉としてはあまり使われなくなった。しかし、文章語としてのシリア語は存続した。シリア文字は単に生き残っただけではなく発展を続け、西シリア文字(8世紀以降)と東シリア文字(6世紀以降。13世紀に一般化)が登場することになる。

§6 13世紀のモンゴル来襲を経て、16世紀以降、シリアとメソポタミアはオスマン帝国の領土となった。やがてシリア語話者(アッシリア人)は、深刻な迫害を受けることになる。

  1. オスマン帝国は第一次大戦で破れて、シリア・メソポタミアは英国とフランスの領土となり、そこから独立国のシリアとイラクが生まれた。シリア語話者は、少数民族として存続している。東方言のカルデア現代アラム語は話者21万人*、西方言のトゥロヨ語スライト語)は話者6万人*とされる。
  2. 東方言の話者の一部は、オスマン帝国の東端やその外側(現在のイラン北西部)に住んだ。その子孫が話す現代語は、アッシリア現代アラム語として知られ、23万人*(現代アラム諸語で最大)の話者を持つとされる。
  3. 19世紀以降、現代シリア語(特にアッシリア現代アラム語のウルミエ方言)での著作が盛んになった。ただし、シリア語話者の相当数が、国外(米国など)への脱出を余儀なくされている。西方言地域からは、ドイツやスウェーデンへの移住者も多い。イスラム文化が栄えた7~13世紀には、東西シリア語圏におけるイスラム教徒とキリスト教徒の関係は比較的良好だったが、その後、外的要因により情勢が不穏になった。

* 1994年のデータに基づく。出典: Ethnologue: Languages of the World, 17th ed. (2013)

§7 以上の背景から、①古代アラム語にはシュメール語・アッカド語・古代ペルシャ語の語彙が含まれ、シリア語もそれを継承している。 ②シリア語は、7世紀ごろまでの中期ペルシャ語(中期ペルシア語)からも語彙を借用している。 ③7世紀ごろまでのシリア語はギリシャ語の影響を強く受け、7世紀以降のシリア語はアラビア語の影響を受けた。 ④現代シリア語は、トルコ語・クルド語・現代ペルシャ語などの影響も受けている。

  1. カラバシ第1巻の単語のうち、ܬܰܪܢܳܓ̥ܠܐ (tarnā)「おんどり」は、アッカド語(紀元前2000年~1000年ごろ)tarlugallu が古代アラム語に入ったもの。この単語はさらに、シュメール語(紀元前3000年~2000年ごろ)dar‑lugal(原義は「鳥・王」)にまでさかのぼることができる。
  2. ܦܶܬ̥ܓ̥ܳܡܐ (peṯāmā)「語句、行」は、古代ペルシャ語から(恐らくアケメネス朝の時代に)古代アラム語に入ったものらしい。
  3. ܡܘܙܐ (mūzā)「バナナ」は、中期ペルシャ語からシリア語に入ったものらしい。

§8 シリア語の歴史は、キリスト教の歴史と絡み合っている。

アラム語はイエス(イェシューア)自身の言語なのに、なぜキリスト教の世界で尊重されていないのだろうか。

ユダヤ教徒がヘブライ語を学ぶように、イスラム教徒がアラビア語を学ぶように、世が世なら、世界中のキリスト教徒がアラム語を学ぶようになっていたとしても不思議はない。ところが、イエスの弟子・孫弟子…たちは、アラム語ではなくギリシャ語で新約聖書を作成した。ある意味においては良い選択だったが、「師の話した通りの言葉を忠実にオリジナルの言語で記録しない」という態度については、少なからず議論の余地がある。すなわち、「イエスの教え」と宣教者たちが定式化した「キリスト教」は必ずしも同一ではなく、アラム語は前者と不可分だが、後者とは不可分ではない。

イエスと同じ言語を話すアラム語話者は、必然的に彼の肉声を身近に感じることができ、「人間としてのイエス」をリアルな存在として意識することができた。キリスト教徒にとって「イエス=神の子」だが、アラム語を話すキリスト教徒にとっては、同時に「イエス=自分たちと同じ言葉を話す青年」という側面があった。しかし、この種の親近感は、イエスを「100%神」として崇拝する立場からは異端と見なされてしまった。

イエスに人間的な面があるかないかというのは究極的には言葉のあやにすぎず、このような問題で教会が分裂したのは不幸なことだった。東方教会が実際に異なる解釈を主張したのかどうかすら、はっきりしない。バチカンは1994年になって(東方教会との共同宣言の形で)大部分は誤解によるものだった」と述[リンク]事実上非を認めている。歴史的には、イエス自身のアラム語でも弟子が使ったギリシャ語でもなく、ラテン語がヨーロッパの教会の「公式言語」となった。

§9 シリア語は、国際的なレベルでも興味深い役割を果たしている。

付録4: タリタ・クム

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新約聖書のマルコ5:41はアラム語の文を含んでいる。ここでは宗教的なこと(書かれている内容を信じるかどうか)を問題にせず、語学的な観点からこれを観察してみよう。

ヤエイロス(ヤイロス)という人の娘が亡くなってしまう。その直後にイエスがその娘の所に行き、奇跡を起こして生き返らせるのだが、新約聖書の原文(ギリシャ語)では、次のような描写になっている。

「そしてその子の片手を取って、(イェススは)彼女に言います。タリタ・クム(Ταλιθὰ κούμ)。これは『この娘、おまえに言う。立ちなさい』と訳されます。すると直ちに娘は立ち上がり、歩いていました。彼女は、だって、12歳でしたから」

「タリタ・クム」はまるで復活の呪文だが、ここまでのシリア語の知識を使えば、これを「普通の言葉」としてダイレクトに理解できる。

  1. ܛܠܝܬ̥ܐ ((ə)līṯa) が「少女」という意味であることは、第20課で学んだ。
  2. ܩܘܡ (qūm) が「立ちなさい」という意味であることは、第17課で学んだ。この文脈では命令形の女性形にする必要があるので ܩܘܡܝ̱ となるが、本質的な違いはない。

結局、「タリタ・クム」は当時の普通の話し言葉で、「少女よ、立ちなさい」という意味であることが分かる。神秘的な呪文のようなものではなく、娘自身にも普通に理解可能な言葉だった。

このように、新約聖書には、シリア語(アラム語)を知っていると特別な生々しさを感じられる部分がある。イエスが話した言葉は、1世紀のアラム語(ガリラヤ地方の方言)。古典シリア語は、おおむね3世紀以降のアラム語(エデッサの方言)。多少の方言差・時間差はあるが、基本的には同じ言語だ。

実際、新約聖書のイエスの言葉については、シリア語版の方が原典のギリシャ語版よりむしろニュアンスが正確な場合もある、という指摘がある。というのも、一方において、ギリシャ語版は本質的にアラム語からの翻訳であり、他方において、シリア語版はイエスが話したのと同じアラム語による最初期のバージョンだからだ。「『ラクダが針の穴を』というのはアラム語からギリシャ語への誤訳に基づく」といった指摘ができるということ自体(その指摘が妥当かどうかは別としても)、シリア語版の持つ独自の強みを明確に示している。

ギリシャ語の新約聖書では、当然ながらほとんど全てはギリシャ語であり、イエスの「肉声」に近い可能性がある部分は非常に少ない。文レベルでは「エリ・エリ・レマ・サバクタニ」と上記の「タリタ・クム」くらいしかない。一方、シリア語版のイエスは、最初から最後までこのような言葉を話す。控えめに言っても興味深いバージョンだろう。

付録5: 無印「Syriac」キーボード配列

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この項の情報は、アラビア語配列またはペルシャ語配列のキーボードに慣れている人のためのもの。それ以外の一般ユーザーはSyriac Phonetic」配列を使う方が早い。

Syriac Phonetic」でない無印「Syriac」配列は、アラビア語101/102キーボードに準じたキー配置になっている。ペルシャ語配列も、基本的な部分はアラビア語配列とだいたい同じなので、無印「Syriac」はペルシャ語配列ともだいたい同じになる。アラビア語配列・ペルシャ語配列のどちらを基準にする場合でも、シリア語の​ “g”と​ “p” は、次のように​ “j” と​ “f” にマッピングされる(ペルシャ語にも​ “g”と​ “p” があるが、それらとは別のキーになる)。

ペルシャ語配列を基準にする場合、次の3文字については「ペルシャ語配列の、アラビア語配列との違い」がそのまま「シリア語配列との違い」になる。

シリア文字の母音記号などの入力法は本文参照。

補足 [2014-12-14追記]

1. 無印「Syriac」でピリオドを入力するには、​“M” のキーが使われる。これは、アラビア語配列の ة、ペルシャ語配列の پ(イラン標準の ISIRI 9147)または ئMicrosoft Farsi)に当たる。[Shift] キーは不要。

2. アラビア語配列では لا を一つのキーでも入力できるが、シリア語の ܠܐ は必ず ܠܐ に分けて入力する必要がある。

3. 四角い括弧 [] を入力するには、​“X” と​ “Z” のキーが使われる。これは、アラビア語配列の ءئ、ペルシャ語配列の طظ に当たる。

この方法の短所

[2015-01-18追記] 無印「Syriac」は、アラビア語配列に慣れている人が同じ感覚でシリア語を入力したい場合には便利だろうが、特有の短所を持つ。問題の一つは、ܘ が押しにくい位置にあること。アラビア語配列において対応する文字は و だが、アラビア語では短母音の u が文字として表記されず、この文字の使用頻度が比較的低いので、この位置でも特に不便ではない。一方、シリア語では原則として u/o/ū/ō/w があるたびに ܘ を入力する必要があり、この文字の使用頻度が高い。そのため、このキーが押しにくい位置にあることは不便に感じられることがある。

どちらの入力法を使うべきか

[2015-07-26追記] 既にアラビア語配列またはペルシャ語配列に慣れている人は、それらと互換性の高い無印シリア語配列を使う方が、ほんの少しだが「キーボード入力を覚えるための時間」を節約できるだろう。しかし、シリア語フォネティック配列は単純ですぐ覚えられるので、あえてアラビア語配列の知識を使わずシリア語はフォネティック配列で入力する、という選択肢もある。好みの差もあるだろうが、シリア語入力自体の効率はフォネティック配列の方が若干高いようだ。

将来、アラビア語/ペルシャ語配列を覚えたいと思っている人は、シリア語の方も最初から無印シリア語配列にしておいた方が効率的だといえ、それはありうる選択肢だろう。しかし、フォネティック配列は単純ですぐ覚えられるので、とりあえずフォネティック配列を使っておいて、アラビア語配列を覚えたら無印シリア語配列に切り替えるのでも別に問題ないし、アラビア語配列を覚えた後もシリア語はフォネティック配列で入力しても全く問題ない。

日本語入力のような複雑な作業ではキーボード配列は大問題だし、入力を覚えるだけでも大変だが、シリア語やヘブライ語は22文字しかないので、どうにでもなる。難しく考えず、選択した配列が気に入らなければ別の配列に切り替える、という気楽なスタンスで良いだろう。仮に2通りのシリア語配列を両方覚えて切り替える場合、ܥ の入力方法がフォネティックでは [I] 無印では [U] になる点が若干干渉するが、それ以外に大きな混乱の原因になる場所はない。アプリやゲームのショートカットと同じで、同じ配列を使い続ければ、そのうち自然に指が覚えて何も考えずにタイプできるようになるし、打ち間違えたら [BackSpace] で消して打ち直せばいいだけの話だ。

一方、現在も将来もアラビア語/ペルシャ語配列を使う予定がない人は、シリア語についてはフォネティック配列を使う方が良い。「アラビア語/ペルシャ語とほぼ同じ感覚で入力できる」というのが無印シリア語配列の最大にして唯一のメリットだが、半面、無印シリア語配列は、アラビア語配列との互換性を実現するために若干無理をしている部分があり、配列に不自然な点がある。つまり、アラビア語配列との互換性を活用しないなら、無印シリア語配列はメリットがない。

付録6: 言語タグ

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syc は古典シリア語、syr は現代シリア語の東方言、tru は現代シリア語の西方言を表す。この記事では、「古典期より前のシリア語」と「古典期より後の文語シリア語で、現代シリア語より古いもの」も syc とする。

東シリア文字で表記された古典シリア語は syc-Syrn で表され、西シリア文字で表記された古典シリア語は syc-Syrj で表される。ラテン文字で表記した場合は、syc-Latn となる。方言による発音の違いを明示する場合、この記事では東方言を -IR(イラン)、西方言を -SY (シリア)とした。本来、国コードによって表される問題ではなく、地域としてはトルコやイラクも関係するが、他に良い方法もないので、便宜上、このようにした。

[2013-12-15追記] arc は、帝国アラム語(前5・4世紀)とプレ帝国アラム語(前7・6世紀)の両方を表す。この記事では、便宜上、「帝国アラム語より後(前3世紀以降)のアラム語諸方言のうち、シリア語の前身に当たるもの」も arc で表す。具体的には、「古典シリア語ではないが CAL に出ている語形」や「推定上の古形」をこのタグで表した。

ライセンス

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2014年1月12日以降、この記事はパブリックドメインです(記事ID e31201e31201a)。ご自由にご利用ください(埋め込まれている画像を含む。リンク先のリソースとフォントファイルを含まない)。

参考情報
  1. 初版公開時、この記事には CC-BY-SA の画像 Ephrem.jpg が(ライセンスとクレジットの表記付きで)含まれていた(フォンテーヌブローの聖ルイ教会(フランス)のステンドグラス)。画像を含めて記事全体をパブリックドメイン化するため、2013年12月29日の更新で、この画像を除去した。
  2. Bardesan.jpg は米国の Wikimedia Commons においてパブリックドメインにあるものとして公開されており、日本でもパブリックドメインにあるものとして扱えるが、地域によって「古美術品の写真の著作権」の解釈が異なることから、潜在的な問題を避けるため、この画像も同時に除去した。
  3. 飾りのアイコン Jessie.png はパブリックドメインの素材ではないため、2014年1月12日の更新で除去した。
  4. シリア文字用の Meltho fonts は、この記事の一部ではないが、改変しない限り自由に再配布可能(書庫内の license.txt 参照)
  5. Nöld. と Jess. は、この記事の一部ではないが、既に著作権が切れてパブリックドメインの状態になっている。
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カラバシ注解 > 更新履歴

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  1. 2013年12月1日: 初版公開。
  2. 2013年12月3日: (1) 第14課: ܕܘܟܰܬ̥ のローマ字表記を修正: 「dūkaṯ」→「dukkaṯ または dūkaṯ」。 (2) シリア語小史§8の誤字を訂正。 (3) その他、細部の微調整。
  3. 2013年12月8日: (1) 第3課: ワウの発音について補足 (2) 第8課: ܐܰܒܐ:「軟音になることが多い」→「軟音になる」。 (3) 第16課: シリア語キーボードでは『"』が入力できない問題について追記。 (4) 第21課: ܡܰܠܦܳܢܐ の軟音について補足。 (5) CSS: 文字 を大きめに表示するようにした。
  4. 2013年12月10日: (1) ܪܰܒ のローマ字表記を修正: 「raḇ」→「rab」。 (2) 第14課: ܕܘܟܰܬ̥ のローマ字表記を「dukkaṯ」に統一。ܕܘܟܬ̥ܐ のローマ字表記も修正。 (3) 第1課第2課: 硬音・軟音の表記について補足。 (4) イントロを一部変更。
  5. 2013年12月15日: (1) シリア語小史に少し加筆。 (2) 第14課: ܪܰܒܬ̥ܐ の発音の説明を整理。 (3) 「単語の背景」の ܡܰܣܬܐ の項に追記。
  6. 2013年12月19日: (1) 第20課: ܒ̈ܳܬܐ のローマ字表記を修正: 「bātē」→「bāttē」。 (2) ローマ字表記と発音: の発音について追記。 (3) ܢܺܚܶܐ第11課)と ܥܺܕܬܐ第16課)の母音記号について補足。 (4) HTMLの細部の調整。
  7. 2013年12月20日: (1) 第17課「参考になる音声ファイル」の誤字を訂正ܚܕܐ ܥܶܙܐ の表記が間違っていた。 (2) archive.org のセキュリティー上の問題について追記。
  8. 2013年12月22日: 第3課: ܡܰـ̈ܝܳܐ の説明を整理。
  9. 2013年12月29日: (1) 「ē の表記」を整理。カラバシにおける ī の母音記号について追記。 (2) 第16課: ܥܺܕܬܐ の母音記号について整理。 (3) 第18課: ܒܝܥ̈ܐ の発音について補足。 (4) 「wa-ḥ(ə)ḏā / wa-ḥḏā」「ヨード / ヨードゥ」の表記不統一を解消。 (5) CC-BY-SA の画像を削除
  10. 2014年1月5日: 第17課: ܥܶܙܐ の項を整理。「態について」に少し加筆。「この注解の内容」を一部整理。
  11. 2014年1月12日: 第19課: ܕܺܐܒܐ の発音について追記。第3課: ܝܘܡ の項を整理。シリア語小史§9の参考文献に Christoph Luxenberg を追加。
  12. 2014年1月19日: (1) 第6課: ܐܶܙܰܠ のローマ字表記を修正。 (2) 「辞書と参考書」: DjVuビューアについて追記。 (3) 第12課: ܒܓ̥ܰܘ の項を新設。 (4) IE6/7に一応対応。
  13. 2014年1月26日: (1) 第21課脱字を訂正: ʾaykāyʾaykawʾ が抜けていた。 (2) 第7課: 「末尾が ܐ なら強調状態」という不正確な説明を改めた。 (3) 「単語の背景」: ܚܰܘܚ̈ܐ の東シリア文字表記について補足。 (4) 東方言の āw/ay と西方言の aw/āy の対応をできるだけ明示するようにした。 (5) 「辞書と参考書」: Jess. の高画質版について追記。
  14. 2014年2月2日: (1) ḥawwāwaw についても東方言の発音を併記。 (2) 第9課: Alan の「4」のローマ字表記について補足
  15. 2014年2月9日: 付録1を更新(Jess. のバージョンの違いについて整理。比較画像を追加。WinDjViewの設定について追記)。
  16. 2014年2月16日: (1) 補足説明に「a/ā/e/ē について」を追加。「ローマ字表記と発音」にも少し追記。 (2) ܥܶܣܒܐ の発音について追記。
  17. 2014年2月23日: (1) WinDjView 用のブックマークを公開。 (2) 「ローマ字表記と発音」に加筆(主に の項)。 (3) 第13課: 閉音節の ā が短くなるのは東方言の傾向であることを補足。 (4) 太字の使い方を一部変更。
  18. 2014年3月2日: (1) テーブル内の title 属性に含まれていた誤字を訂正: 「Ṣāhḏē」→「Ṣāḏē」。 (2) 東方言の zlāmā qašyā に当たる短音 e を区別して表記するようにした。 (3) 斜体の使い方を一部変更。
  19. 2014年3月9日: web.archive.org へのリンクをHTTPS化。(2014年12月14日に元に戻した。)
  20. 2014年3月30日: 第9課: ܪܝܚܐ のローマ字表記を修正。古典シリア語としての発音が示されていなかった。
  21. 2014年4月6日: ܢܺܚܶܐ の東方言での発音について付記。ܪܝܚܐ の項に「ḤY の順番に文字が並ぶ語」について追記。
  22. 2014年4月27日: 新装版公開。(1) フォーマットを「箇条書き」から「定義リスト + テーブル」に変更。細部を調整。 (2) ܐܶܙܰܠz が二重になる、という趣旨の記述を削除。2014年1月19日の修正が不完全で、古い記述が残っていた。 (3) ܐܰܪܝܐ を通性から男性に修正。 (4) ܦܬܓܡܐ のローマ字表記を peṯ(ə)g̱- から peṯg̱- に変更。 (5) IE5.5/6/7に対応。
  23. 2014年5月4日: 第17課 ܥܶܣܒܐ の項: Nöld. の節番号を修正。第4課と付録2: 説明の仕方を一部変更。
  24. 2014年6月9日: (1) zlāmā qašyā に当たる短音のローマ字表記を é から è に変更。本質的にはどちらでもいいことで、Alan は é を使っているが、ここでは è を使うことにした。 (2) 「補足説明」において、ê を使った別表記をやめた。
  25. 2014年8月3日: ܐܝܬ̥ のローマ字表記を ʾīṯ から (ʾ)īṯ に変更。
  26. 2014年8月17日: (1) ܨܰܦܪܐ の項で、「午前4~6時ごろ」という記述を削除、代わりに補足説明を追加。 (2) シリア語がギリシャ語の影響を強く受けた時期について「5世紀以降」と限定するのをやめた。
  27. 2014年8月24日: 付録4: 「ベツレヘムまたはナザレの方言」→「ガリラヤ地方の方言」。
  28. 2014年8月31日: 単語の背景: 「シェケル」の説明を「約15グラム」から「約11–14グラム」に改めた。
  29. 2014年9月7日: 第16課: ܥܺܕܬܐ のダーラスの発音の説明を「脱落」から「脱落または同化」に改めた。
  30. 2014年9月28日: 小史: 「オスロエネ王国」の別名「オルハイ王国」が説明なしで使われていた。用語を前者に統一。
  31. 2014年10月12日: 補足説明: 「開音節の ē を表すのに ܐ が使われる」という部分を「使われることが多い」に変えた。
  32. 2014年12月14日: (1) 付録5に補足: ピリオドの入力法の説明が抜けていた。 (2) ܣܝܡ の二重目的語について補足説明を追加。
  33. 2015年1月4日: 付録5: 「アラビア語には g がない」という記述は不正確なので改めた。ペルシャ語配列についての記述を Microsoft Farsi と ISIRI 9147 の両方に対応させた。
  34. 2015年1月18日: 付録5: 無印シリア語配列の短所についてコメント。
  35. 2015年7月26日: (1) 付録5に「どちらの入力法を使うべきか」を追加。 (2) 第19課の背景として、旧約聖書におけるライオンの出没について追記。 (3) 「単語の背景」の zūzē の項に、zūzē は現在の20円くらいに当たるのではないか、ということを追記。
  36. 2015年11月15日: 「シリア語小史」: アラム語が公用語になった時期を紀元前「500年ごろ」としていたが、「700年ごろ」に改めた。「500年ごろ」はペルシャの公用語になった時期だが、アラム語はそれ以前にアッシリア・バビロニアでも使われている。
  37. 2016年5月8日: /ʔ/ の発音について追記。

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